2012年4月16日月曜日

競わずゆるやかに解決したい、色の課題


例年サクラの時期になると、この話題に触れないわけには行かず…。ということで、穏やかな色のシートの話題です。あまりに見慣れた方、どうかご了承下さい。

自身でもこの件に関しては、いい加減製品の紹介だけでなくより様々な分野への普及へ向けて先へ行かないといけない、と思い始めています。今年は多くの団体・個人の尽力により、以前と比べ様々な場面で使って頂いている例も増えましたし、いくつかのサイトで小売りも始まりました。それはもちろん、YRシートの開発や商品化にご尽力なさった方や製造・販売元であるメーカーの方々のお力であり、私がちょっと宣伝したり授業や講演で紹介したりしている程度のことは、そうした方々の足元にも及ばないと思っています。ですから余計に、勝手に広報という意味ではもっと別の方法を考えて行かなくてはと思うのです。

47日(土)には総勢60名が参加、というお花見に参加してきました。小田原城の麓に並ぶ鮮やかなシートの合間、まるで地べたに座っているかのように見える一角がYRシートを使った一群です。自身でも離れたところから写真を撮ってみて本当に驚いたのですが、シートの存在感が全く感じられないほど環境と同化していました。色の効果とは本当に面白いものだと改めて感じました。

画面中央、もはやシートが見えません…。

色鮮やかなシートが景観に与える影響は決してお花見の時だけではありませんが、この時期全国的に一気に出現しTVのニュースなどでも取り上げられる場面が集中することを考えると、やはりお花見=派手なシートの出現、というイメージはある程度浸透してしまっているのかも知れない、と感じます。
鮮やかなシートVS穏やかなシート問題に関しては、周囲の多くの方に実に様々な意見を頂きます。

・景観法等ができ、景色を大切になどと言っても、所詮大多数の人が使うのは鮮やかなシートである
・いくら良い製品でも量販店やコンビニエンスストアなどで売っていなければ、使いようがない
・あんな派手な色だらけのお花見なんて行きたくない
・安くて手軽なものにはどうしたって勝てない
・(穏やかな色のシートを)もっと手軽に変えるようにして欲しい
・結構な知識人ですら、何がいけないの?というレベル。それが日本の主流なのではないか
・教育で変えて行かないといけない。大学生がお花見で鮮やかなシートを使うレベルだから

…等々。いずれも、まあ正論だなあと思います。現に、大勢は色鮮やかなシートですから。
でも、これまで私はfacebooktwitterで穏やかな色のシートのことを掲載した際、何名もの方から使いたい・購入先を教えて欲しいという要望を頂き、都度ご紹介して来ましたし、ごく親しい方には使用例の画像を提供して頂くことを条件に、シートを貸し出したりしてきた結果、(少なくとも私の周囲には)『穏やかな色のシートいいよね!』という方が本当にたくさんいらっしゃいますし、口コミで広まりつつもあり、今後もそれは確実に増えて行くと確信しています。

ただこれは勝ち負けで考えると、恐らく今のところは負ける勝負だと思います。ですが、この問題はそこであきらめるとかしょげるとかそういうことではなく、景色がどうあるべきかという市民としての見識の問題であり、少し大げさにいうとまちをどう使いこなすかという人それぞれの暮らし方・生き方の問題であると考えています。

先日twitterである建築家の集団が、『鮮やかな色のシートはよくないから、私達はこれを使う』といって、白いシートを用意していました。明度の高い色彩は昼夜を問わず環境の中では最も進出して見えやすい色であり、鮮やかな色とはまた違った意味で淡く繊細なサクラの色よりもよく目立ちます。周辺環境との調和やサクラの色を引き立たせることを目的とした時、白という色の選択は色彩学的には完全な間違いだと私は思います。

背景よりも目立つ白を選択することは、結局は鮮やかな色よりもこちら(白)の方が良いだろう、という差異の強調にしかなり得ません。目立つ・目立たないということは単に鮮やかさだけの問題ではなく、背景となるものとの相対的な関係によって決定づけられるためです。

もちろん、見方や条件を変えれば白が有益な可能性もある、と思っています。しつこいようですがここではあくまで『儚く移ろう季節の花の色を愛でることを目的とした際』という条件下での話をしています。

ですがその建築家達が例えばメディアを使ってもっと積極的に白いシートを推奨し始めたら、恐らくそちらの方が圧倒的に浸透力はあるでしょう。それが大勢になったらどうしよう、とかなり本気で悩んでいますが、それをtwitter上で議論に持ち込むのもどうか、という気がして中々行動に移せずにいます。なぜなら、その建築家達は私のことをフォローしていない(=色彩になんぞ興味を持っていない!)ためです。

そう、問題はシートの色云々よりも、環境における色彩の役割とそれを色彩学の側面から実証できる職業がある、ということを認知してもらうことから始めなければならない、ということなのです。見通しは決して明るくありませんが、確実に自身の身近な人達の意識は変わりつつあります。これを身内だけの論理にすることなく、引き続き丁寧に証明していく手法をうみ出していかなければ、と思っています。

賛同してくれる方が大勢を占めることはもしかしたら無いかも知れない、でも何を際立たせるべきかという前提の上においては、環境色彩の『自然界の構造に従え』という教えが絶対的な正論であることを確信しています。そして同時に、正論がいつも正しいとは限らない、こうでなければならないという決めごとは息苦しい、たかがシート、鮮やかなシート以外にももっとひどい色はある…。

正論にはそうして常に反論が付きまといます。そうしたことを(今のところは)出来るだけ幅広く受け止め、大勢に対抗するのではなく受け入れつつさらりと受け流すような方法で、自身の道を切り開いていきたいと考えています。

天候にも恵まれ、とにかく皆さん楽しそうでした。

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自己紹介

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色彩計画家/環境色彩デザイン/いろでまちをつなぐ/MATECO代表/色彩の現象性/まちあるき/ART/武蔵野美術大学・静岡文化芸術大学非常勤講師/港区・山梨県・八王子市景観アドバイザー/10YRCLUB/箱好き/土のコレクション/舟越桂