2012年5月18日金曜日

100年の時間がつくる景色

先週の無錫の様子、少しですが写真を中心にご紹介しておきます。
北京から到着したのが夜だったので、翌朝は早起きして散歩に出かけました。この時点では、実は市内のどの辺に自身が居るのか、よくわかっていないという状況でした(後に地図で確かめたところ、滞在したホテルは市のど真ん中でした、そのすぐ目の前が下の写真のような運河)。

運河をゆったりと進む船。朝から遊覧なんて優雅だなあ、と思ったら…
…ごみ収集船でした
これからまちが変わっていく際、地区ごとや景観的な特徴のある通りになどに対し、どのような方針やルールがあれば快適なまちなみを形成することが出来るか。まずはその地のまちなみの歴史的な背景や特徴を調査していきます。

今回、最も記憶に残っているのは運河沿いの古い集落です。

1950年代に建てられた民家など。ごみ収集船の色、こちらは鮮やかな橙でした
そして最も興味深かったのが、この新旧の対比です。どちらの側が古いか、わかりますか?

1920年代の集落と、再開発により商業街として生まれ変わった建物群
向かって右側の、少し黄味がかった(黄ばんだ?)一体が、1920年代の建物群です。左側は一昨年整備されたエリアで、内部はカフェやレストラン等に改装され大変賑わいのある通りとなっていました。建具等は古い物を再利用しており、一見新築には見えませんが、部分的にはかなりフラットな(単調な)塗装で仕上げられていました。
古い建物の外壁。近付いて測色してみると、10YR 6.0/1.0程度でした
古い集落だけを見ていても、そんなに色気のある印象はありません。むしろ全体にかなりグレイッシュな、色味のない雰囲気です。

赤い服が何とも鮮やかに見えました
ところが、完全な無彩色が近接し比較してみると、彩度0.5~1.5程度の色が驚くほど表情豊かに見えるのです。約100年という時間の蓄積が、人の顔に刻み込まれるシワやシミのように、味わい深い陰影や厚みをつくっているのだ、と感じました。

少し野暮なことを考えると、例えば高圧洗浄などを施した場合には、外壁の表情は恐らくもっと均質で色味は失われることと思います。先の再開発エリアも、もしかすると忠実に『建設当時の・素材そのものの色』を再現できているのかも知れません。 無彩色のまちなみはは古い様式を用いていながら、どこか現代的な印象が感じられました。その対比も面白い、と思いましたし、エイジングをあまり作為的に施すことにも疑問を感じてしまいます。

素材が現代のマテリアルに変わるとき、色彩の考え方はどの時代の・何に“依る”べきか。悩む日々となりそうです。

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自己紹介

自分の写真
色彩計画家/環境色彩デザイン/いろでまちをつなぐ/MATECO代表/色彩の現象性/まちあるき/ART/武蔵野美術大学・静岡文化芸術大学非常勤講師/港区・山梨県・八王子市景観アドバイザー/10YRCLUB/箱好き/土のコレクション/舟越桂