2012年12月21日金曜日

測色016-木材会館の経年変化

2012年も残り僅かとなってきました。
今年は例年にない慌しさで、事務所の大掃除・年賀状作成の目処が未だ立っておりません…。

測色シリーズ、今年も随分とマイペースに続けて来ました。
改めてじっくりと素材・色彩を見る、ということの面白さ、毎回様々な気付きがあります。

夏から秋にかけて、新木場にあるとあるアーティストのアトリエに何回か脚を運ぶ機会がありました。初めのうちは打合せで精一杯だったのですが、話がようやく起動に乗った頃、帰りに新木場駅周辺を見て回る余裕が出てきました。

駅前にある木材会館は2009年6月に竣工した東京木材問屋協同組合の事務所兼貸オフィスビルです。

竣工から約9ヶ月後、外観を拝見したことがありましたが、3年を経過した現在は木材の色が随分と落ち着いた印象になっていました。
早速、いつもの見本帳を取り出して実測。

ファサード正面、3.0Y 6.0/1.5程度。
同じ角材の側面、10YR 6.0/3.0程度。
陽に晒されていない奥の方の柱は、7.5YR 5.0/4.0程度。
木材の経年変化の様子、色相は赤みが抜け、明度が上がり、彩度は下がっていく様子が見て取れました。

コンクリート本実型枠部分、5.0Y 6.5/1.0程度。
自然素材の色むらは、自然の現象がつくり出したものです。変化の様子を見ると、どこに陽が当たって、雨風が吹き込んで来るのか…を想像することも出来ます。

測色結果をマンセルプロット図に落としたもの。周囲にある色の帯は、自然景観色の推移を示しています。
製材した木材はそこからまた新しい時間の変化を刻み、表情が変わって行きますが、樹木の幹の色は自然景観の中では“動かない色”にあたります。大地の土や砂、石などのように、一年を通して草花の色等に比べるとずっと変化が少なく、また地上において大きな面積を占める、自然界の基調色である、と言えるでしょう。

自然界にはまた、命あるものが色を持っている、という法則があります。鮮やかな色を持つ花も一時的なものであり、徐々に枯れ色に変化して行きます。
人間も同様、血が通っていることで、顔色が生き生きとしたり、外気温の変化によって顔が赤らんだり。年齢を重ねると代謝が下がりますから、顔色がくすんで見えやすくなりますし、更に命を全うし、火葬された後には全ての色を失い白い骨となります。

いつまでも変わらない色を有する、ということは自然に抗う行為です。変化し続け、それがいつかは失われる、ということに貴重な時間の流れを感じることが出来るのではないでしょうか。だからこそ命ある時間を大切に慈しむ、という精神を保てるのではないか、と考えることがあります。

自然界にあるもの・見た景色から、私達は様々な刺激を受け、インスピレーションを得ています。豊かな表情を持つ素材の、あるがままを受け入れること。または丁寧な加工を施し、長く美観を保てるような工夫を重ね、新しい命を吹き込むこと。

自然素材をふんだんに使用した木材会館の3年後を拝見し、素材の選定は慎重かつ大胆に、という思考・検証の行き来が繰り返された結果なのではないか、と感じました。

0 件のコメント:

コメントを投稿

自己紹介

自分の写真
色彩計画家/環境色彩デザイン/いろでまちをつなぐ/MATECO代表/色彩の現象性/まちあるき/ART/武蔵野美術大学・静岡文化芸術大学非常勤講師/港区・山梨県・八王子市景観アドバイザー/10YRCLUB/箱好き/土のコレクション/舟越桂