2015年1月5日月曜日

日本のスタンダードカラー

新年あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。

早速ですが、年始に鎌倉市で見かけた仮囲いを見て、改めて日本にも「YR系というスタンダードカラー」が浸透しつつあることを感じましたので、写真と共に。

八幡宮へ続く若宮大路、段葛整備中です。石積みの補強や老朽化した桜の植え替え等が進められるとのこと。
15時過ぎでしたし、iPhoneしか持っていなかったので、写真が暗めですが…。これは恐らく10YR(イエローレッド)系でしょう。防護柵等に推奨されている景観配慮色よりもやや彩度がありますが(恐らく3程度)、歩行者空間に圧迫感を与えないよう、また周辺の街並みから突出し過ぎないよう配慮がなされていると感じました。

通常の仮囲い用パネルは白色で、近年は光触媒によるセルフクリーニング機能を持ったものが多く使用されています。明るくフラットで汚れにくいパネルは清潔感があり、工事中の雑多な雰囲気を払拭する効果や、様々な広告媒体の下地としての役割も担っています。

しかしながら、やはり鎌倉のような歴史を生かした観光地や自然景観との関係性が強い環境の中では人工的な高明度は対比が強く、過剰に目立ちすぎてしまうでしょう。
「目立たせる必要があるか・ないか」、あるいは「出来るだけ控えめに」という配慮や工夫がこうして一般的になってきたことを、新年早々に嬉しく感じました。

このblogでは何度も書いていますが、景観配慮色に対する拒絶反応(何でも茶系だと暗い、つまらない、創造性に欠ける、思考停止になる…)が多々あることを承知の上で、それでも尚、公共空間にはスタンダードカラーがあるべきですし、もっと浸透していくと良いなと考えています。

例えばイギリスのブリティッシュ・グリーン。やや暗めの緑、という幅の中で、様々なアイテムに展開されていますが、このスタンダートカラー(イギリスの場合はナショナルカラーと呼ばれていますが)があるからこそ、ロンドン市内を走る真っ赤な二階建てバスの色が印象的に見える、という関係性が保たれているのではないでしょうか。

21世紀初頭のスローガン。ダグラス・クープランド(小説家)の作品。21_21で開催中の「活動のデザイン」展より。
「混沌と自由を混同するなんてみっともない」。21_21 DESIGN SIGHTで開催中の活動のデザイン展で最も印象的だった作品です。「人間と消費とテクノロジーの関係性は常に、希望と混迷に満ちている」ゆえ、こうした至極シンプルな言葉が世代や領域を問わず、私たちのこころに突き刺さるのだ、という解説がありました。

自由さ、豊かな創造性、時にハッとさせられる色。こうした生き生きとした変化が感じられるために、スタンダードカラーは無くてはならないものだと思います。

万能な色を使いこなすこと、個性のある色を生かすこと。

どちらか一方、極論ではなく。どちらも大切にしながら、今年も環境色彩のあれこれについて綴って参りますので、どうぞ宜しくお付き合い下さいますよう、お願い致します。

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自己紹介

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色彩計画家/環境色彩デザイン/いろでまちをつなぐ/MATECO代表/色彩の現象性/まちあるき/ART/武蔵野美術大学・静岡文化芸術大学非常勤講師/港区・山梨県・八王子市景観アドバイザー/10YRCLUB/箱好き/土のコレクション/舟越桂